リピートを生む定期コース ― 顧客が続けたくなる仕組みとは?

新規顧客は獲得できても、リピート購入につながらず売上が安定しない――。そんな課題を解決する有効策が「定期コース1」です。しかし、価格メリットだけでは顧客の定着は難しく、継続利用を促すには工夫が欠かせません。成功させるための2つのポイントをご紹介します。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』4月3日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.20」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝顧客が続けたくなる定期コースの仕組み〟

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定期コース成功のカギは「商品実感」と「手厚いフォロー」

中堅通販化粧品会社 担当者

新規顧客の開拓は順調ですが、リピート購入につながらず売り上げが安定しません。今後、安定的な経営を目指すため、定期コースの導入を考えていますが、どのような点に留意して取り組むべきでしょうか。

リピート顧客の育成や安定的な売上げ貢献のために、定期コースの導入はとても有効な施策です。お客さまにとっても「安い価格で購入できる」「注文の手間が省ける」「特典が受けられる」など、便利でお得に商品を購入でき、双方にとってメリットがあります。

「1本目の実感」が定期継続の分かれ道

定期コースを上手に運営し、成功させるためには、二つの段階でポイントがあります。
第1段階は、定期コースへ誘導して引き上げるとき。
この段階で最も大切なのは、お客さまに購入した商品の良さを実感していただくことです。定期コースに加入したお客さまでも、必ずしもその商品を本当に気に入って購入しているとは限りません。特にここ数年の通販化粧品業界では、定期コース加入のハードルを低くして、「初回大幅割引2」などのキャンペーンが珍しくなく、そうした価格メリットに魅力を感じて定期購入に踏み切るお客さまも多くなっています。

しかし、価格のメリットだけで加入してくるお客さまは、商品本来のファンになっているわけではないので、安定的な「定期顧客」にはなり難い傾向にあります。そのようなお客さまに2回、3回と続けて購入していただくには、1本目の商品を使い終えるまでに、商品の効果を実感していただくことが必要です。

そもそも商品力が一番大切なのはもちろんですが、的確な使用方法や使用量、商品特徴やエビデンスなど商品価値がしっかりと伝わる情報ツール類をお届けする商品に同梱し、お客さまに「この商品でなければ!」と強く思ってもらわなくてはなりません。正しく使って、商品そのものを気に入っていただければ、割引価格で購入できる定期コースはお客さまにとってなによりも魅力です。

さらに、お届け日の指定や使用ペースなどお客さまの都合をしっかり聞き入れ、「安い・簡単・便利」といった定期コースならではのメリットも実感していただければ、定期コース導入は成功するでしょう。

届くたびにワクワク、定期便を待ち遠しくする工夫

定期コースへの引き上げ3に成功したら、二つ目の段階はいかにして定着率を上げるかです。

乱暴に言えば、「釣った魚にエサをやらない」的な発想でいると、お客さまはあっという間に他社へと乗り換えてしまいます。そうならないために、とにかくお客さまとのコミュニケーションを密に行うことが必須です。せっかく定期的にお客さまと接触するチャンスがあるのに、ただ「商品を送って終わり」という会社も実は案外多いものです。

中には会社都合の販促チラシだけを入れる会社もありますが、これでは商品を受け取ったお客さまをがっかりさせるだけです。商品を送る箱の中には、季節のお便りやお手入れ方法などの「プチ美容情報」を欠かさず入れたいところです。時には、気分が盛り上がるサプライズプレゼントなど、心あたたまるサービスがあるとなお良いでしょう。 

毎月お届けする定期コースだからこそ、お客さまが商品の到着を心待ちにしてくれるような演出が大切なのです。定期コースに加入していただいたお客さまにいつまでも継続していただくには、手厚いフォローやコミュニケーションが何よりも大切です。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

定期コースを選ばれたお客様へ、商品理解から未来の姿まで。お客様が「続けたい」と思えるストーリーを描くことが、私たちの得意分野です。コミュニケーション戦略を共につくらせてください。

用語解説

  1. 定期コース-化粧品通販における「毎月や隔月で自動的に商品が届く購入形態」。顧客にとっては割引や便利さのメリットがあり、企業にとっては売上安定・顧客育成の基盤。 ↩︎
  2. 初回大幅割引-新規顧客を定期コースに引き上げるための販促施策の一つ。ただし価格動機だけの顧客は継続率が低い。 ↩︎
  3. 引き上げ-単品購入やお試し購入から、定期コースへと誘導すること。通販化粧品の重要なCRM施策。 ↩︎

深掘りQ&A

 初回の使用実感を高めるために、どんなツールが有効ですか?

 商品パンフレットだけでなく、
・使用量がひと目でわかる写真付きガイド
・使用前後の体感の目安(「〇週間でこう感じる人が多い」など)
・お客さまの声をまとめた小冊子
などが有効です。単なる説明ではなく「こうなれる」という未来をイメージさせることが大切です。

価格メリットだけで入会した顧客をファン化するには?

価格動機で入会したお客さまは「冷めやすい」層です。そのため、単なる割引ではなく
・他社では得られない美容知識・ブランドの姿勢や理念を伝えるストーリーを加えることで「この会社だから続けたい」という気持ちを育てられます。

定期コースのコミュニケーションはどの部署が担うべきですか?

マーケティング部門だけでなく、コールセンターやお客様相談室の役割も大きいです。電話応対の中で「使い方フォロー」や「実感を聞き取る」ことは、次の施策に直結します。部門をまたいで顧客体験を一貫させる仕組みづくりが成功の条件です。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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