「売る」から「続けてもらう」へ――化粧品通販、リピートの壁を越えるには?

「良い商品を出しているのに売れない」「最初は買ってくれるのに続かない」――そんな悩みを抱える通販化粧品会社は少なくありません。リピートが続かない本当の理由、それは“きれいになるプロセス”をきちんと伝えていないからかもしれません。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』3月29日号に掲載された「基礎講座 vol.1」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ続けてもらうために必要なこと〟

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

“きれいになれる”体験の提供不足が、リピートの壁になっている

通販化粧品会社
販促担当者

当社は異業種から通販に参入し、化粧品を販売しています。お試しセットを軸とした折り込みチラシを地方紙などに出稿し、かなりの反応を得ています。しかし2回目以降のリピート購入に結び付きません。一年もたつと、顧客のリストは全く新しいものになってしまう状況です。製品の完成度にも自信があるだけに、残念でなりません。

化粧品はそれだけでは“半完成品”です。お客さまに使い続けてもらい、きれいになっていただくことが最終目的であり、これが化粧品会社の責任だといえます。
この点を理解せずに、物を売ればそれでいいという発想で通販化粧品事業の運営をしていてはリピートが続きません。

お客さまの“きれいになりたい”に伴走する情報提供を

お試しセットを使って気に入ってもらい、本商品を購入して、きれいになるために使い続けていただく――この正しいサイクルに持ち込まなくてはなりません。
そのためには単に製品を売るだけで終わりにするのではなく、使い続けてもらうためのさまざまな情報提供が必要です。使用方法から次回購入時の手続きまで、店頭の美容部員のようにきめ細やかに情報提供できるコミュニケーションツール1を用意するべきです。

使い続けた時の肌の変化を記録してもらうチェックシート2や、他のお客さまの体験談など、どのように美しくなれるかの過程を疑似体験できるものも必要でしょう。1ヵ月目、2ヵ月目と「こんなにきれいになりましょう」というような、お客さまを励ます情報を届けるのも手です。

コールセンターも単なる受注業務だけではなく、豊富な美容情報の提供が必要です。お客さまの肌の悩みを聞き、使用方法を説明するなど、プラスアルファのコミュニケーションを十分に行うことです。長話を敬遠するお客さまが多いのも事実ですが、それは本当に役立つ情報を短時間で提供していないからではないでしょうか。何か一言でも役に立つ会話ができれば耳を傾けてくれるはずです。

まずは、注文を受けた際に、使用量や使用方法の説明を一言加えてみてはいかがですか。また、商品と一緒にお送りする納品書でも丁寧に解説したいものです。

ブランドの考えと合わない販促施策、していませんか?

セット(複数)購入での割引、期間限定での割引、定期購入による割引など、使い続けるお客さまにとって価格面のメリットを用意しておくことも大切です。ただし、あまりにも過度な値引きは本末転倒。もともとの価格設定に不信を持たれ、信用を失うことになりかねません。テスト販売を繰り返しながら、売り上げとお客さまの満足感とのバランスの良い施策を見つけていくことが良いでしょう。

お試しセットの広告と製品の特徴に食い違いのある場合も、お客さまの期待を裏切ることになります。「美白製品であるにもかかわらず保湿を訴求する」「過度に短期間での効果をアピール」するなど、期待が外れた時のお客さまは“買わない”ことで抵抗します。
つまり最初から最後まで、コンセプトは一本筋が通っていなければなりません。まずは製品のセールスポイントを見直し、「使い手の気持ち」になって考えてみてください。そのうえで、臨場感のあるコピーやクリエイティブで売り込むことが大切です。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

フォー・レディーでは、初回のお届けから始まるブランドとお客様とのコミュニケーションを設計し、継続した関係構築を目指したお手伝いをしています。

用語解説

  1. コミュニケーションツール-商品説明書、フォローメール、同梱物、LINEなど、顧客とつながるための手段全般。 ↩︎
  2. チェックシート-肌の状態や使用感を記録する表形式のシート。継続使用のモチベーション支援にも。 ↩︎

深掘りQ&A

長期的な信頼を築き、持続的に成長するために企業が最終的に目指すべきことは何ですか?

企業が長期的な信頼を築き、持続的に成長していくためには、「リピーター顧客、ひいてはロイヤルユーザーの育成を重要視」し 、マーケティング力、商品開発力、顧客育成力、販売促進企画力、接客接遇のサービス力を発揮できる体制を築くことが、成功の鍵となります 。これは、組織が目先の売上だけにとらわれず、お客様の「自分の肌に関心を持ってもらうこと」という化粧品の需要を伸ばす基本的な原動力に立ち返り、ブランドだけではなく将来のマーケットを着実に育むことを念頭におく必要があります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

BACK TO INDEX