「会員情報誌」はお客さまをファンに変える最強ツール

化粧品通販において、購入いただくことがゴールではなく「お客さまに使い続けてもらう」ことが本当の目的です。そのために欠かせないのが「会員情報誌1」。会員情報誌がブランドのファンづくりにつながる理由について説明します。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』3月10日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.19」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝お客様をファンに変える「会員情報誌」とは?〟

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

業界全体を覆う“同質化”の壁をどう突破するか!

中堅通販化粧品会社 担当者

化粧品通販をスタートして3年目になります。お客さまとのつながりをもっと強くするために「会員情報誌」を配布したいと考えています。しかし、どこから手を付けて、どのように制作したら良いかわかりません。アドバイスを。

会員情報誌は多くの通販化粧品会社が発行しています。ある程度の会員数になったら「会員情報誌を作りたい」と思うのが目標の一つになっているようです。

そもそも化粧品は、商品を販売したから完了するというビジネスではなく、購入したお客さまに使用してもらわないと、本来の目的が完了しません。そのため、化粧品の販売は昔から「適切な使用方法を教える美容部員」という専任の販売員が存在しているのです。

各メーカーから派遣された美容部員は、お客さまに適切な使用方法を教え、時には実演販売や試用販売などを通じて美容情報を伝えながら化粧品を販売してきた歴史があるのです。通販化粧品の場合も単に「物品」として商品を販売するだけでは、お客さまをリピートユーザーとして育成することも、季節にあった正しいお手入れを指導することもできません。そのままだとお客さまは自然に離脱して、継続使用などは「夢のまた夢」となって、ファン育成2はできなくなります。それでは化粧品ブランドとして成立しないということになります。

そのような背景があるため、通信販売であれ、店頭販売であれ、化粧品の販売は、お客さまに定期的な情報発信を行う必要があるのです。「会員情報誌」は情報伝達手段として最も適切なツールなのです。

ファンを育てる情報誌は“学び”と“発見”を提供する

会員情報誌を作るために最も重要なことは、「どんな内容を掲載するか」ということです。

ほとんどの通販化粧品会社では、「お客さまの欲しい情報=キャンペーン情報などのお買い得情報」と思い込んでいるようです。


お買い得情報をお知らせするだけなら「お買い得ご案内DM」でも目的を果たしますし、仰々しく「会員情報誌」などと名付けなくても良いはずです。「情報誌」と銘打つからには、お客さまにもっと価値ある情報をお届けしなくてはなりません。

別に難しく考える必要はないと思います。自分たちが提供している化粧品が、どんな考え方の元に作られているのか、具体的にどんな原料でどんな処方で作られているのか、またその理由はどんな根拠があるからなのか、そのようなことを正しく伝えることです。また、そのような化粧品だからどんなお手入れ方法で使用してほしいのか、その結果どんな肌になれるのか。

それらを説得力のあるデータなどを用いて解説していくだけでも、お客さまにとっては、自分の使用している化粧品をより深く知ることになります。そうすると愛着が生まれます。正しい使用方法を実践し始めて、より効果を実感できるようになるのです。

また、最近では同じ化粧品を使っている他の会員の意見や要望や感想の情報も人気が高いようです。

長期的な信頼関係は“価値あるコンテンツ”から生まれる

化粧品に関するあらゆる情報を、企業目線で語るだけでなく、お客さま目線で、「関心を持っていただけるような内容に編集してお届けする」のが、「会員情報誌」の役割だと思います。それを定期刊行物として発行するのです。最初は季刊誌程度でスタートし、その後は毎月の情報誌としてお届けできたら、信頼を獲得することができるのではないでしょうか。

また、そのように頻繁に発行するようになってくると、毎回同じような記事のオンパレードではお客さまも読んでくれなくなります。研究レポートがあったり、季節の肌悩みのお手入れ方法のアドバイスがあったり、お客さま同士の座談会があったり、モニターの報告レポートがあったりと、まるで女性誌の編集室のような、「コンテンツ開発3」が不可欠になるのです。

そのような「ネタ」作りを続けることによって、会社側はお客さまの声に深く耳を傾けることができるようになりますし、お客さまは、企業の情報誌を通じて「美容」の知識を得て、お手入れを正しく行い、そのブランドのファンに育っていくのです。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

会員情報誌は、お客さまとブランドをつなぐ大切な架け橋です。フォー・レディーは、その役割を理解し、お客さまに響く表現と伝えるべき内容を丁寧に組み立ててきました。会報誌のリニューアルや立ち上げをお考えの際は、どうぞ気軽に声をかけてください。

用語解説

  1. 会員情報誌(会報誌)-企業が会員顧客に定期的に送付する冊子や小冊子。商品情報だけでなく、美容アドバイスや顧客の声、ブランドストーリーなどを掲載し、ファン化・継続利用を目的とする。 ↩︎
  2. ファン育成-単なる購入者を越えて、ブランドに共感・信頼し、継続的に支持してくれる顧客を育てる取り組み。口コミや紹介にもつながりやすい。 ↩︎
  3. コンテンツ開発-情報誌やWebなどで発信する「記事・写真・インタビュー・レポート」などを企画・制作すること。単なる販促ではなく「学び・発見」を与える情報を整えることがポイント。 ↩︎

深掘りQ&A

 会員情報誌がなくても問題ないのでは?

短期的に見ると、なくても商品は売れるかもしれません。しかし、化粧品通販で最も重要なのは「継続して使っていただくこと」です。会員情報誌がないと、正しい使用方法や季節に合ったケアを伝える機会を失い、お客さまは効果を実感しにくくなります。その結果、自然に離脱してしまい、リピート率やファン育成が伸び悩むのです。情報誌は単なる販促ツールではなく、お客さまとの信頼を積み重ねる“橋渡し役”。長期的なブランド成長には欠かせない存在といえます。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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