化粧品売り場に求められる“メーカー横断型アドバイス”とは

通販の普及と情報収集の変化によって、女性たちの化粧品の選び方はこの30年で大きく変わった。成分・効果・価格を自分で比較し、ブランドに縛られない「単品使い」が当たり前になっている。一方で、百貨店やドラッグストアの化粧品売り場は、いまだメーカー別の区切りが中心だ。これからの化粧品売り場に求められる「メーカーを超えたアドバイス」の可能性を考える。今回のコラムは、『週刊粧業』4月13日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.22」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝消費者意識とズレる化粧品売り場の構造改革〟

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化粧品の選び方が変わった――ブランド主導から消費者主導へ

ここ30年来化粧品の仕事に携わってきて思うことは、化粧品ブランドに対する女性たちの意識が大きく変化したことである。その原因は通販が一般化して多くの化粧品メーカーが登場し、購入ルートがいくつもできたことや、定価販売しない店舗が出てきたことなどがあげられる。

また美容雑誌ではコスメライターが化粧品に関する情報を詳しく語っているし、ネットではクリックするだけで、その商品の特徴や効果、成分に至るまで簡単に検索できてしまう。

お客様が使い心地やその実感などをネット上に投稿し、互いに意見を出し合うことが一般化しており、それを参考に購入を決める人も少なくない。また、どのように買えば同じ商品がお得に手に入るかも調べることができるため、購買方法も大きく変化してきた。

化粧品はイメージ優先だった時代は終わり、効果効能という実質価値が求められ、それに見合う価格設定が問われるようになった。今後はもっと大きく化粧品市場も変化していくだろう。一般消費者が簡単に豊富な商品知識を得て、自分で化粧品をセレクトできる時代が到来したのだ。

メーカー別売り場が抱える違和感と、相談しにくい現実

ところが有名ブランドが集まる百貨店の化粧品売り場は、相変わらずメーカーごとに区切られている。そのため自分のお気に入りブランドが決まっていないお客様は、肌悩みを相談したくてもなかなか気軽には近づけない。

最近はブランド指定のフルラインで使ってくれるお客様が少なくなって、肌悩み別に様々な製品を選ぶ『単品使い』が当たり前になりつつある。こんな現状でお客様が求めているのは、偏りのない冷静でかつ自分の肌に合った適切なアドバイスなのではないだろうか。

たとえば、百貨店やドラッグストアの化粧品売り場担当者が、売り場に並ぶ化粧品をすべて把握し、お客様の肌悩みニーズに合わせたアドバイスをして、適切な商品を紹介できるシステムが完備していたら、お客様にとってはこんなに便利なことはない。

これからの化粧品売り場に必要な「メーカー横断型アドバイス」

個々の詳しい商品説明はメーカーから派遣された美容部員に任せるとして、まず最初にメーカーにとらわれない公正なアドバイスを受けられるとしたら、お店に対する信頼は格段に上がるに違いない。そんな「小売業側のコスメアドバイザー」という存在があったら、お客様の肌悩みや予算、希望タイプなどをヒアリングして、適切な商品紹介ができるのではないか。

肌悩みに気が付いたお客様を大切にして、いつまでも美容への関心を持ってもらい、化粧品に投資するお客様をより多く育てていかなければ、化粧品業界全体のパイが大きくなることはない。お客様が欲しい商品やサービスは美容以外にもたくさんあるのだから……。

今後化粧品売り場を活性化するために、店頭でのアドバイス力はとても重要なことだと思う。お客様の化粧品の買い方が変わり、ブランド意識も変わった。そろそろ化粧品売り場の販売方法も、変わるべき時ではないだろうか。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

フォー・レディーは、「何を売るか」よりも前に、売り場・伝え方・アドバイスの仕組みをどう設計するかを重視してきました。化粧品を“選ぶ時代”に合った売り場づくりを、現場視点で支援しています。

深掘りQ&A

なぜ今、メーカー別売り場に違和感が生まれていますか?

情報の主導権がメーカーから消費者へ移ったからです。かつては「ブランドが語る価値」を信じて選ぶ時代でしたが、今は消費者が成分・価格・口コミをみて比較するため、売り場の構造が、その変化に取り残されているためだと考えます。

 なぜ今後「単品使い」はさらに進むと考えられますか?

肌悩みは年齢・季節・生活環境で細分化しています。一つのブランドで全てを解決する前提そのものが、現実と合わなくなっているんだと思います。消費者にとって合理的なのは、目的別に最適解を組み合わせることだからです。

この考え方は通販やECにも当てはまりますか?

むしろ通販こそ重要です。選択肢が無限にあるからこそ、「どう選べばいいか」を整理する仕組みがないと離脱が起きる可能性が高くなります。売り場=リアル店舗に限りません。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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