季節に合わせた化粧品プロモーションとは?—『化粧暦』という考え方

化粧品は通年商品が多く、季節に合わせたプロモーションが曖昧になりがちです。しかし、肌や生活環境は確実に季節の影響を受けています。では、化粧品はどのように季節と向き合い、伝えていけばよいのでしょうか。アパレル業界の事例を手がかりに、そのヒントを探っていきます。今回のコラムは、『週刊粧業』2月1日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.7」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝季節プロモーションが狙うブランドスイッチ〟

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アパレル業界に見る「季節」と売上の関係

2012年の冬、アパレル業界ではバーゲンセールが早まるところと、そうでないところが生じるというニュースを聞いた。

というのも、毎年バーゲンが早まり、シーズンの初めからOFFプライスが常態化していたため、昨年は業界全体で足並みをそろえてバーゲンを後ろ倒しにしたところ、各社揃って業績を落としてしまったという反省から、2012年は例年通りに早いバーゲンに戻したお店と、やはり正価販売の期間が実質上ほとんどないという点を是正しようとしているお店に分かれたようだ。

このように、アパレル業界ではシーズンの変化と年間催事の当たり外れは、業績を大きく左右する。

一方、化粧品販売の場合もアパレル業界ほどではないが、季節の変化に応じたプロモーションを展開してきた。ただし化粧品業界では「値引き催事」という意味合いではなく、他社商品からの「ブランドスイッチ」のチャンスとして、新商品リリースのタイミングにしてきた会社がほとんどだと思う。

また化粧品は通年商品も多いので、アパレルのように「衣替え」しなければならない理由が希薄になるため、どうしてもシーズンイベントがおざなりになりがちだ。

それでも私はやはり季節感の演出は、化粧品の大切なプロモーションだと思う。初夏ならUVシーズンだし、真夏は皮脂対策、秋はおしゃれメイク、冬は徹底保湿のスペシャルケアアイテムを、ジャストタイミングでお客様に勧めたい。

「化粧暦」を通じて育てる、正しいお手入れ習慣

シーズンプロモーションを通じて、お客様に「化粧暦(こよみ)1」の概念を持ってもらうことは、きちんと肌のお手入れをするお客様を育成するためにも不可欠なことだ。

商品を夏用、冬用と用意しなくても、夏は皮脂対策で涼しくお手入れする方法、冬は重ねづけなど万全の乾燥対策、そんな使い方、使用量を調節することで、季節に合った適切なお手入れ方法のアドバイスができる。

お客様が使用する化粧品ブランドを切り替えるタイミングはやはり「季節の変わり目」。肌トラブルに陥るのもこの時期だから、大きなきっかけになっていると思う。

そんな時に、季節に適した、効果的なお手入れ方法も一緒に提案すれば、ブランドスイッチの機会もより多くなるに違いない。

そのためにも、ぜひ自社製品で、使い方を含めた年間の「化粧暦」を作ってみてはいかがだろうか。たとえ「通年商品」として打ち出している商品でも、季節の変化に応じたお手入れの方法を提案することは、とても大切だといえる。

それは四季がある日本人の暮らし方をお客様とともに楽しんで、日本人の化粧の文化を共有するチャンスでもある。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

フォー・レディーは、化粧品を「売るため」ではなく、お客様が正しく使い、長く続けられるためのコミュニケーション設計を大切にしています。季節に合わせた使い方提案や「化粧暦」の考え方を通じて、ブランドとお客様の関係を、無理なく育てるお手伝いをしています。

用語解説

  1. 化粧暦-季節や生活環境の変化に合わせて、化粧品の「使い方」「使用量」「お手入れのポイント」を整理した年間の考え方です。 ↩︎

深掘りQ&A

「化粧暦」は、新商品が少ないブランドでも有効ですか?

はい。むしろ通年商品が中心のブランドほど効果を発揮します。化粧暦は「商品を増やす」ための考え方ではなく、既存商品の使い方や役割を季節ごとに整理し、伝え直すためのものです。新商品に頼らずとも、季節提案によってお客様との接点を自然に増やすことができます。

「化粧暦」は、どの媒体で活用するのが効果的ですか?

 会報誌や同梱ツールなど、手元に残る媒体との相性が特に良いです。季節ごとに読み返せる形で伝えることで、習慣化しやすくなります。Webやメールの場合も、1年を通した連続企画として設計すると効果が高まります。

「化粧暦」を作る際、最初に考えるべきことは何ですか?

商品ではなく、「季節ごとにお客様の肌がどう変わるか」を整理することです。そこから逆算して、使い方・順番・量・注意点を落とし込むと、無理のない、続けやすい提案になります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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