節約志向の今こそ効く!顧客単価を引き上げる仕掛けとは

震災以降、節約志向が根強く残る中、定期購入顧客は増えているものの、1回あたりの購入単価が下がってきているという声が多く聞かれます。今後の売上拡大には、顧客単価アップのための“価値ある提案”が不可欠です。安売りではなく、価値をつけた販売戦略とは何かを考えます。
今回のコラムは、『日本流通産業新聞』7月25日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.14」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝顧客単価を引き上げる仕掛け〟

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節約志向でも購入したくなる、自分たちの「価値」を添える

通販化粧品会社 担当者

定期で購入してくれる顧客は増えてきているのですが、昨年よりも購入単価が下がってきています。当然売り上げにも影響してきているので、何か対策をしなければなりません。顧客単価を上げるためはどのような施策をすればよいでしょうか。

11年の東日本大震災後、さまざまな商材で消費者の買い控えが起こり、化粧品メーカーも、大変厳しい状況に置かれたことはご存知の通りです。景気回復とともに、12年は化粧品市場にも回復の兆しが若干見えてきましたが、お客さまの購入単価はまだ低いままになっています。

日本通信販売協会の「全国通信販売利用実態調査報告書」によると、1回当たりの平均購入金額が5000円未満という少額利用率の微増が続いています。そして、震災以降の節約志向も依然として続いており、「同じものなら少しでも安く買いたい」という消費者の意識は変わっていないようです。 

特に化粧品は女性にとって毎日使用する必需品。節約のために必要な商品のみを購入し、プラスアルファとなる化粧品の購入は控える、あるいは今まで使っていた基礎化粧品を低価格のラインに変えるということもあるでしょう。当然、品質は下げたくない気持ちは強いため、低価格であっても高品質な化粧品を求めています。

購入単価アップには“納得感”と“お得感”をセットで

通販事業の規模を拡大するために、顧客の購入単価アップは欠かせません

今までより1品でも多く、そして高価格商品を買ってもらうためには、ついで買いをしてもらう「クロスセル1」や「セット商品2」をつくる施策を考えなければなりません。

しかし、「あわせて使ってください」と訴求するだけでは、節約志向になっている女性たちの財布のひもも緩めることはできません。女性は買い物をする時、常に購入するきっかけや理由を探しています。それは購入した後に「お得で賢い買い物をした」などの満足感を得たいからです。

購入単価をアップするための販売施策には、お客さまが「この化粧品できれいになりたい」、しかも「今ならお得」という購入意欲を湧かせる付加価値や合理性を訴求していくことが必要になります。

顧客単価をアップするための販促施策はハードルインセンティブ3も一つです。

〇〇〇〇円以上購入すると、欲しい商品またはプレゼントが付いてくる施策です。これは一定金額のハードルを設定することでお客さまが得られるメリットを訴求できます。

例えば、1回1万円以上購入すると好きな商品や美容器具などをプレゼントするといったものです。ついで買いを促す最もオーソドックスな方法で、商品以外の価値を上乗せできることになります。

二つ目はクロスセルでのまとめ買い訴求。相乗効果が得られるセット商品を作り、特別価格を設定して販売する方法で、セットで買うことの合理性を訴求できます。単品だと購入をためらってしまうお客さまに「2~3品がセットでお得」と思わせ、さらに「あわせて買うことでより美しくなる」と思わせることが大切なポイントです。

このように、同じ商品を販売するにしても、訴求方法次第でいくらでも価値が高まり、お客さまにとって「きれいになれる」という期待を盛り上げることができます。

女性心理に寄り添った「季節性」と「使い方提案」

お客さまはいつも「安い」ばかりを望んでいるわけではありません。特に女性は男性と違い季節や行事などに関連して購買意欲が後押しされるもの。日常生活のワンシーンや季節の必需品で自分なりの楽しみを見つけることができます。 

そんな女心をつかむために、新しい使い方・楽しみ方を提案し、商品の価値を高める販促施策を実施していけば、少しずつ顧客単価はアップしてくると思います。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

単価アップにつながる「買いたくなる体験」を、購買心理に寄り添った“仕掛け”と“伝わるコンテンツ”で丁寧に設計します。クロスセルやセット販売だけで終わらせない、心を動かすコミュニケーション戦略をご提案します。

用語解説

  1. クロスセル-主に通販やECサイトで使われる販売手法で、顧客が購入しようとしている商品に関連する別の商品をあわせて提案・購入促進すること。たとえば、化粧水に美容液を提案するなど。 ↩︎
  2. セット商品-関連性の高い複数の商品を1つのパッケージとしてまとめ、割引価格や特典付きで販売するもの。まとめ買いを促進し、単価アップにつながる手法。 ↩︎
  3. ハードルインセンティブ-一定の購入金額や数量を超えることで、特典やプレゼントが得られる仕組み。例:「1万円以上購入で美容グッズプレゼント」など。 ↩︎

深掘りQ&A

 なぜ「クロスセル」や「セット商品」が購入単価アップに有効なのですか?

クロスセルやセット商品は、お客さまがすでに購入を検討している商品に「関連性のあるもう1品」を自然に提案することで、“ついで買い”を促す手法です。特に化粧品の場合、「あわせて使うとより効果的」というストーリーが作りやすく、納得感のある提案になります。セットにすることで割安感や“お得に買えた”という満足感も演出でき、節約志向の消費者にも受け入れられやすいのがポイントです。

 顧客が“高価格商品”を買いたくなるのはどんな時?

女性は買い物をする際に「なぜこれを今買うべきか」という理由を求めています。たとえば「限定」「今だけ割引」「使うと効果が高まる」などの要素が、行動を後押しする大きな動機になります。価格だけではなく、“きれいになれる期待感”や“賢い買い物をしたという満足感”をしっかり届けることが、高価格商品の購買につながる鍵です。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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