新規顧客が取れない時代に問われる“創業精神”

新規顧客の獲得が思うように進まない――。紙媒体、インフォマーシャル、ウェブ広告など、手法を変えても成果は安定せず、せっかく獲得してもリピートにつながらない離脱客が増えている。いま、多くの中堅通販化粧品企業が直面している現実です。なぜ、これほど新規獲得が難しくなっているのか。その背景を探ってみましょう。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』11月8日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.51」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝新規獲得の「アンチテーゼ」と「創業の精神」〟

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

新たな発想で俯瞰し、ブランドの独自性を問い直

通販化粧品会社 担当者

新規顧客獲得がうまくいっていません。最近、新聞・雑誌などの紙媒体、インフォマーシャル、ウェブ関連など、どんな手法を使っても新規顧客獲得が思うようにいきません。獲得できてもリピートしない離脱客が多く、効率は大変悪い状況です。

通販化粧品各社の最近の悩みを代表するような質問です。

新規顧客開発の効率が大変悪くなってきているのは、既存の中堅化粧品通販メーカー全体の問題です。通販化粧品会社にとって「新規顧客獲得」は死活問題。各社とも解決策を見いだそうとさまざまなチャレンジをしているようですが、なかなかうまくいかないようです。

今の新規顧客開発は、通販化粧品ビジネスがスタートしたときのような、”固定観念を打ち砕く”ような発想を持つことが再度求められている気がします。しかも先駆者たちがスタートさせた「空白」の時とは異なって、さまざまなメーカーが飽和状態の今だからこそ、”固定観念の打破”を考える必要があると思います。

女性マーケットを俯瞰する視点が、発想転換のカギになる

そもそも通販化粧品というビジネスの創成期は、既存の店頭販売化粧品に対するアンチテーゼ1からスタートしました。通販化粧品の代表アイテムとなった「オールインワン」も、それまでのお手入れステップに対するアンチテーゼからスタートしたのです。

つまり化粧品通販のヒットは、このアンチテーゼが根底にあったはずです。ところが、昨今の「新規獲得が不調だ」との嘆きは、通販化粧品ビジネスが好調で、スムーズに新規獲得ができていた時代の成功パターンと比較しているように思います。

今やこれまでの通販化粧品の成功パターンは過去のものになっており、競争が激化したレッドオーシャンの中では、既存の成功パターンとは異なる”新たなアンチテーゼ”が求められているはずです。そのためには、これまでの成功パターンから一度離れて、化粧品全体のマーケット、あるいは女性マーケット全体を俯瞰で見る視点が必要なのではないでしょうか。 そうするともっと緻密なお客さまの研究、マーケティング、あるいは新しい発想の商品開発なども考えなくてはなりません。一番大事なブランドコンセプトは、他社との差に明確なオリジナリティーがあるのかどうか、といったことも考える必要が出てきます。

創業精神を合言葉に、テスト展開から新発見を

今や大切なのは、固定観念を打ち破る”創業の精神”だと思います。

それが明確で、ターゲット層や商品、マーケティング戦略がぴったりと一致していれば、後は大胆に「発想の転換」を試みて、レッドオーシャンからブルーオーシャンへの道を探るべきだと思います。大切なことは、通販化粧品の創成期に、化粧品について、いわば「未経験」の創業者たちがビジネスを成功させたように、過去の成功体験に頼ることなく、ストレートにお客さまにアプローチできる柔軟な発想が必要なのではないかと思います。

例えば、これまでの通販化粧品のセオリーではなく、店頭販売あるいは他産業の成功例なども参考になるでしょう。またベテラン社員の発想ではなく、思い切って若手社員の発想を採用してみても良いかもしれません。

要は創業者が1人で考えた時代と同じように、今度はブランドに参加する一人一人が参加する”創業の精神”で、発想の転換を図り、皆のアイデアや知恵を結集すれば、面白いことがいくつも考えられるはずです。そのアイデアをふるいにかけて、通販化粧品が得意とするテクニック「小さな範囲でのテスト展開」を繰り返してみれば、新たな発見もあるでしょう。

ビジネスの活力を失わないためには、固定観念を払拭(ふっしょく)し、過去の成功パターンを忘れて、新たなアプローチ、新たなメディアやルートにチャレンジしていくべきではないでしょうか。そして小さな成功を見つけて、積み重ねていくべきだと思います。一方では、新規顧客獲得にばかり頼らなくても、多くのファンがリピート購入してくれる足腰の強いブランド作りにも、同時に力を注ぐべきでしょう。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

“創業の精神”を再びチームで共有し、そこから生まれた新しい発想を実際のクリエイティブへとつなげていくこと。フォー・レディーは、御社のアイデアを整理し戦略に落とし込み、最終的に広告やツールといった具体的な形に仕上げるまで、一貫して伴走します。単なる制作にとどまらず、社内の意識を揃え、ブランドの独自性を明確にしていくプロセスそのものを支援できるのが、私たちの強みです。

用語解説

  1. アンチテーゼ-既存の常識や前提に対抗する、新しい発想・逆の立場の考え方。例:複雑なお手入れに対する「オールインワン化粧品」が象徴。 ↩︎

深掘りQ&A

創業精神」を今のチームでどう共有すればよいですか?

創業時の理念やエピソードを改めて確認する場を持つことです。社内のブレーンストーミングや若手の意見交換を通じて「私たちはなぜこのブランドをやっているのか」を共通言語にすることが大切です。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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