オンライン会議が変えた美容意識と化粧品需要

コロナ禍によって私たちの生活は大きく変わりました。外出機会の減少やマスク生活の定着は、化粧品の売れ方にも影響を与えています。さらに、オンライン会議の普及は「自分の顔を画面で見る」という新しい体験を生み、美容への意識にも変化をもたらしました。デジタル化が進む中で、化粧品会社はこれからどのようにお客様と向き合っていくべきなのでしょうか。今回のコラムは、『週刊粧業』2022年3月14日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.72」です。ぜひご覧ください。

※本コラムは2022年当時の状況を前提に執筆しております。現在と異なる情報を含む可能性がありますが、課題の捉え方や発想のヒントとしてご活用いただければ幸いです。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝 オンライン会議が変えたスキンケアと自己認識〟

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

コロナ禍が変えた化粧品市場と生活習慣

昨年の暮れに「収束するかもしれない」と希望が見えたコロナ禍は、オミクロン株の登場で感染者が急増してしまった。軽症者が多いと言われていたが、じわじわと高齢者にも広がって重症者も増えてきた。

2020年の初めにコロナの感染が広がり始めた時に、いち早く長期化を予測した著名な学者がいたが、本当にその通りになってしまった。政府や都は「感染は止める、経済は止めない」の掛け声のもとに様々な対策を講じているが、なかなか抜本的な解決はできていないように感じる。

経済産業省の発表では、化粧品はコロナ禍前に売上を牽引してきた訪日外国人のインバウンド需要が、旅行業界と同じように激減しているらしい。

また国内需要も外出自粛の影響や、マスク生活の定着で差が大きく、口紅やチーク、ファンデーションの売上が落ち込み、アイメイクやスキンケアは2021年後半からやや上向き、クリームや美容液は伸び始めたということだ。

ちなみに自分のことを振り返ってみても、メイクは薄化粧だったがコロナ禍になってさらに薄くなった。

チークは元々あまり使わなかったが、口紅もここしばらく使用していない。アイメイクは変わらず、ただし眉の形には少しこだわるようになった。マスクを着けた時にバランスが良くないとなんだかおかしいと感じるからだ。スキンケアはこれまでと変わらない手入れをしてきた。

オンライン会議が気づかせた「デジタル越しの自分の顔」

ところが最近少し変わったのは、高機能を謳う美容液と少し高いクリームを使い始めたことだ。購入のキッカケはWeb会議である。パソコン画面に映るマスクを外した自分の顔を見て「これはまずい」と実感したからだ。

コロナ禍前のようにコンシーラーやファンデーション、チークや口紅などで武装している訳ではない。パソコンの前で一人になった時はマスクを外して会話をする。声を発すると自分の顔が大写しになる。

今のパソコンは画像が鮮明に映るので、いやでも自分のシミやシワ、たるみなどが目に飛び込んでくる。相手もこの画像を見ているので、まるでスッピンを見られているようだと気が付いた。いち早く在宅勤務をスタートさせた働き盛りの男性たちが化粧品に関心を持ち、ファンデーションも使い始めたというニュースの原因はこれだったのかと納得がいく。

もちろん映像も音声もミュートにしている若い世代もいるが、私たち世代では相手に失礼だと思ってしまうので、その勇気はない。

デジタル時代の化粧品販売 ― 「寄り添うアドバイス」の可能性

これだけ画像が鮮明だと、化粧品の販売現場でのデジタル化はもっと進化しそうな予感がする。自宅からスッピン状態でパソコンの前に座り、遠隔でアドバイザーから指示を受けながらお手入れしてみれば、これほど適切な指導はない。

店頭でアドバイスを受けるより、より適切なアドバイスが受けられるのではないかと思う。化粧品に限らずあらゆる小売業でお客様「一人ひとりに寄り添う」ことをテーマに掲げている企業が多いが、非接触型の販売方法でもそれは十分可能になるのではないだろうか。

私たちは東日本大震災を経て、今回のコロナ禍も経験し、一番大切なことは家族とのつながりや毎日の生活を楽しく快適に過ごすこと、つまり身近な幸せが大事だと感じてきた。だから自分の身の回りに起こるストレスや困りごと、不満を我慢しないで解決したいと考えている。

そのため課題解決の方法、ツールの使い方、心地よさや良い習慣の見つけ方など、プロにアドバイスして欲しいと感じていることが多い。しかも一般的&平均的な方法ではなく、自分に合った方法を見つけたいと思っているのだ。売り込むためではなく、親身になって企業がアドバイスしてくれるなら、受け入れる用意はできていると思う。

化粧品会社が美容だけでなくライフスタイル全般や健康アドバイスをしてくれるとなれば、聞く耳を持つはずだ。デジタル化は一人ひとりのお客様にもっと近づくためのツールとして活用できるのではないかと感じた。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

今回のように、生活環境の変化はお客様の美容意識や購買行動を大きく変えていきます。だからこそ企業には、商品を売るだけではなく、お客様一人ひとりの生活や悩みに寄り添ったコミュニケーションが求められているのではないでしょうか。もし「お客様の声をもっと商品やコミュニケーションに活かしたい」「リピート顧客を増やしたい」とお考えでしたら、お気軽にご相談ください。

深掘りQ&A

デジタル化が進むと化粧品販売はどのように変わるのでしょうか?

今後はオンラインカウンセリングやチャット相談など、デジタルを活用した接客がさらに広がると考えられています。自宅にいながら美容アドバイザーのアドバイスを受けたり、肌状態に合わせた商品提案を受けたりすることが可能になれば、店舗に行かなくても自分に合った美容情報を得られるようになります。デジタルは効率化のためだけではなく、お客様一人ひとりに寄り添う新しいコミュニケーションの手段として活用されていくでしょう。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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