間違った使い方が効果を下げる―化粧品の正しい使用法と習慣設計

間違った使い方は、化粧品本来の効果を大きく損なう要因となります。SNSで拡散される発信者独自の使い方や、長年の習慣による誤った使用方法により、本来の実力を発揮できていないケースは少なくありません。企業に求められる“習慣設計”と伝え方のあり方について考察します。今回のコラムは、『週刊粧業』2023年2月27日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.82」です。ぜひご覧ください。

※本コラムは2023年当時の状況を前提に執筆しております。現在と異なる情報を含む可能性がありますが、課題の捉え方や発想のヒントとしてご活用いただければ幸いです。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝 化粧品の効果を台無しにする自己流ケアの正体〟

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

広がり続ける自己流スキンケアの実態

最近、若い人の間でSNSを使用したさまざまな投稿が多いが、化粧品も本来の目的と違う用途で使われている動画などの投稿が横行している。美容賢者を装って、美容オイルを洗顔料として用いたり、コンシーラーをファンデーション代わりに使ったり。そんな投稿が拡散され、試す人の解釈でさらに好き勝手に変更され、さまざまな自己流のお手入れが生まれていく。

こんな現象は前々からシニア層にもあった。お客さまインタビューをすると、自己流のお手入れをしているお客様だらけだ。化粧水の前に導入美容液ではないクリームを使ってしまう方や、本来ステップの最後に使用するクリームをオールインワンとして使う方も多い。中にはクリームを最初につけ、次に化粧水を使うという方もいて、これにはさすがに驚いた。

一般的な基礎化粧品は、化粧水が肌をうるおして水分の通り道をつくり、美容液で成分を浸透させ、クリームでふたをするといった具合に、ライン使いをすることでそれぞれのアイテムが役割を果たし、総合的に肌を整えるように作られている。日本の多くの化粧品会社が100年以上かけて提唱してきたこの美容メソッドもまだまだ定着していないようだ。

自己流から抜け出せない理由は「習慣」と「伝え方」

またメーカーが化粧品を開発する時は、肌に与える機能だけではなく使い心地にもこだわっている。化粧水では肌をさっぱりさせ、最後のクリームでは包み込むようにしっとりしたものを…… というように、お手入れ後にお客様が気持ちよかったと感じるように設計されているはずだ。そのため、順序が違えば効果も使い心地も本来の実力を発揮できない。正しい使い方をしなかったため、当然満足する実感が得られなかったお客様が、離脱してしまうケースは多い。

では、化粧品を正しく使ってもらえない理由はなぜか。

それは、お客様の習慣を変えるのが難しいからだ。20代のときは化粧水だけでよかった肌も、40代になれば美容液やクリームが必要となる。だが、それまで使ってこなかった人は、なかなかライン使いに慣れない。必要なアイテムを揃えたとしても使用量が足りない場合もある。

若い時は少ない量でも十分に実感できていたため、年齢を重ねたあともその量のまま使い続けてしまう。これらは習慣になり、無意識にやってしまうため、正しい使い方を意識してもらうための伝え方や意識づけの仕組みづくりが必要だ。

使い方を“当たり前”にするための設計とは

そもそも化粧品会社がお客様に正しい使い方を、わかりやすく伝えられているかどうかだ。「500円玉大の化粧水を顔になじませてください」とパッケージや、初回購入時のパンフレットに記載しているだけでは、正しい手順も使用量も伝わらない。

誰もが同じ手順で、同じ量を使えるよう、文字だけではなくビジュアルをふんだんに使って視覚で見せるべきだ。できれば手に乗せた画像を掲載するだけでなく、肌になじませるのにどのくらいの時間が必要か等を動画で見せたい。

さらに、製品の工夫も必要だ。使用量が取り出しやすくなるように、スポイトやスパチュラに目盛を入れたらとても便利な気がする。シニア層向けのスキンケアラインの容器には、使う順序に合わせて番号を入れているメーカーもある。まだまだ工夫次第で正しい使い方をお客様に意識させることが可能だ。

また一般的な使い方の手順とは別に、「自社のオリジナルな美容メソッド」を確立することも必要だと思う。他社とは一線を画して、化粧水と美容液の順序を逆転させているメーカーもある。それはそれでお客様へのアピールにも繋がり、初期の段階で使い方訴求を強くできる。要は自社の化粧品とその使い方については、きちんと筋の通った考え方を示して欲しい。自社の美容メソッドが確立していなければ、一貫した情報を発信できない。その結果、何を信じていいのかわからなくなったお客様が自己流のお手入れに走ってしまうのだ。

化粧品にとって使い方は肝である。正しく使えば最大限に効果を発揮するが、間違った使い方をすれば満足も実感も得られないどころか、肌トラブルなどの事故を招く恐れもある。化粧品会社はただ製品を売るだけでなく、自社の美容メソッドのもと、正しい使い方を徹底して訴求する義務があるのではないだろうか。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

正しい使い方が伝わり、習慣として定着して初めて、その価値はお客様の中で実感へと変わります。私たちは、商品とともに“使い方”まで設計し、顧客との関係を育てるコミュニケーションをご提案しています。

深掘りQ&A

なぜお客様は間違った使い方をしてしまうのですか?

大きな要因は「習慣」です。
スキンケアは毎日の行動であるため、一度身についた使い方は無意識に繰り返されます。さらに、「なんとなくこれで大丈夫」という自己判断が積み重なり、誤った使い方でも違和感を持ちにくくなります。そのため、単に情報を伝えるだけでなく、“行動を変える仕組み”が必要になります。

使用量が足りないと、どのような問題が起こりますか?

 「この商品は効かない」と誤った評価につながり、離脱にもつながります。
化粧品は適切な量で使用することを前提に設計されています。使用量が不足すると、成分が十分に行き渡らず、効果を実感しにくくなります。その結果、効果がないと判断されてし舞う可能性が高くなります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

BACK TO INDEX