日本では65歳以上が人口の約3割を占め、シニア層は美容業界にとってますます重要な市場になっています。しかし、今のシニア世代を従来の「高齢者」というイメージだけで捉えることはできません。仕事や趣味を楽しみ、健康や若々しさへの関心も高く、美容に対する意欲もまだまだ旺盛。人生100年時代に広がるシニアマーケットの可能性を考えます。今回のコラムは、『週刊粧業』2026年8月24日号に掲載された「激変するコスメマーケットvol.121」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした生産・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。
「高齢者」という言葉と、シニア本人の意識にはギャップがある

自分がシニアと呼ばれる世代になったからこそ感じることかもしれないが、若い頃「老人」と呼ばれる人たちの意識を想像していたことと、いざ自分がその立場になってみると、想像していた姿とは全く違うと感じる。
そもそも自分ではあまり「年を取った」という実感がない。たまに年配者らしく「年寄りなので……」と口に出してみることもあるが、他人から「高齢者」と呼ばれることには、違和感を覚えてしまう。
私は現役で仕事をしているからかもしれないが、生活スタイルは若い頃と全く同じだ。そのため意識の変化もなく、日常は仕事を精一杯こなして、あとは気の合う友人と出かける楽しみが息抜きになっている程度である。
多少気を付けているのは、バランスの良い食事と、適度な運動、必要な睡眠時間を確保することだけで、身体的にも何か大きな不都合があるわけではない。むしろ私は子供の頃や壮年期の方が病気がちであった。今は安定していると言える。
実は周りにも、元気で活躍している大先輩が多い。森英恵さんや、桂由美さんは、95歳前後まで活躍されていたし、美容家の川邉サチコさんは先ごろ『87歳。“私基準”で生きる』という本を出版した。一般の方でも100歳を超えて化粧品店の店頭に立っている販売員もいれば、訪問販売で100歳超えの美容部員も活躍していると聞く。
男性陣でも、80~90歳を超えている経営者も多く、リタイアされた方もまだまだ活躍されて「120歳まで生きる」と公言されている方もいらっしゃる。ある投資家から聞いた話では、海外のセレブたちも同様に、長生きの研究に投資しているそうだ。

人生100年時代に求められる「健康」と「若々しさ」

そう考えると、AIの普及や医療の発達によって私たち人間はもう少し長生きできるのかもしれない。高齢者が増えることで弊害が出てくる心配もあるが、20代から働き始めて90代まで働けば、生産性の高い人生を送ることができる。単に生命が維持できるということでは意味がない。様々な社会的活動も可能な、体と心の両面を、若い頃のまま維持できるようにならなければならないのだ。
そのためには、老化しないフィジカルと、見た目にも若々しい姿を保つ方法が不可欠だ。つまり医療と美容の発達が重要になり、業界を挙げてシニアの人々をサポートしなくてはならないことになる。
美容業界にとって「シニアマーケット」は新たな成長市場になる

日本は高度経済成長期を経て「世界一速く高齢化が進む国」として注目されてきた。現在では65歳以上の日本人は、人口の約3割もいる。これに団塊ジュニア世代の50代を加えると、日本人全体の50%を占めることになる。人手不足を嘆く前に、これらのシニア層に若々しい体作りと、意識改革によって元気を取り戻してもらい、社会の一員としての役割を果たしてもらうことが必要ではないだろうか?
人生100年時代。誰もが見た目も体も若々しさを取り戻して、自分自身をリスキリング(学び直し)し、新たな生きがいを見つけて、楽しい人生を送りたいと願うはずだ。そのために医療業界も、美容業界も精一杯の支援ができるし、社会課題も一気に解決する。三方よしの状態が可能になるはずだ。
これからの美容業界は人口が減り続けるヤング層を追いかけるだけではなく、「シニアマーケット」を再度掘り起こすべきである。「シニア領域」こそ人生100年時代の“宝の山”なのだから。
シニア層の価値観や情報との接点は、時代とともに変化しています。
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鯉渕 登志子
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