新人をできるだけ早く第一線に送り出したい――。多くの通販化粧品企業が直面する課題です。しかし、人手不足の中で先輩社員が手探りで教えるだけでは、果たして本当に“即戦力”になれるのでしょうか?新人を育てるうえで、まず何を優先すべきなのか考えていきます。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』6月1日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.40」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。
業務マニュアルを整備し、型を身につけさせる

4月に採用した新人たちの研修期間の終了時期が近くなってきました。それでなくても人手が足りないので、教える期間は先輩たちが無理をして時間を捻出していたような状況です。いよいよ配属が決まって、この新人たちを早く戦力化したいのですが…。
人手不足は通販化粧品会社でも深刻で、採用担当の方々はたいへん苦労していると思います。新人たちを早く戦力化したいのはどこの会社も同じです。私が人材育成で一番初めにやって欲しいと思うのは、その会社の「お客さま」に接する機会を作って欲しいということです。
そもそも通信販売は店頭販売と異なり、直接お客さまに対面する機会が少ないため、どんなお客さまかを知らないまま業務をしてしまうことがあります。それが勘違いの原因になり、知らないうちに大きなミスを引き起こしてしてしまうことが多々あります。
そのため私は早いうちにお客さまを知る機会を作って欲しいと思うのです。各社とも新人をコールセンターに配属するのはよくある例です。しかし私はできれば、電話だけでなく対面で会える機会、たとえばお客さまイベントやインタビュー、座談会等で対面する機会があると良いと思います。対面は多くの情報を得ることができます。通信販売だから対面のチャンスを利用してはいけないということはありません。
店頭販売でもお届けや宅配、通販をサービスの一環にしている時代です。通信販売も対面接客しても良いのではないでしょうか?
業務マニュアルを整備し、育成と効率化の基盤をつくる

通販化粧品のお手伝いをしていると、各社ともビジネスの手法がまちまちで、なかなか健康食品のようにパターン化され確立された手法というものがありません。美容理論からターゲットとなる女性像までまちまちなので仕方がないと言えばそれまでですが、私は早く人材を育てるためには、「業務マニュアル1」をきちんと整備することが不可欠だと思っています。
比較的新しい業界ということもあり、マニュアル類がきちんと整備されていない会社も多いようです。それでは新人だけでなく、既存社員の業務効率も上がらないはずです。通販化粧品会社は「一般社員のマニュアル」だけでなく、業務の手順・作業フロー等をきめ細かく記載した「美容マニュアル」「通販マニュアル」等を整備しておくべきだと思います。
新人たちが、そのマニュアルに沿って仕事を進めれば自然と学習できるようなシステムにしておくのです。業務のマニュアルを与えることで新人は手順を覚え、仕事のポイントを掌握するようになります。 またそのマニュアルを部門ごとに“型”2として整えておけば、会社の管理もとてもスムーズになります。
“型”に縛られず、自分らしい工夫と想いを伝える

ところが、“型”を重視しすぎると、モノマネや、やらされ感が強くなり、自分で考え工夫することが少なくなりがちです。そして挙句の果ては、テクニックや手段が最優先になり、お客さまを喜ばせること等は考えも及ばなくなってしまいます。
業務マニュアルに、自分で工夫をして「想いを伝えること」を忘れさせない内容も入れる必要があるでしょう。昔から「やって見せ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」という言葉があるように、人を育てるのは並大抵のことではないと思います。

鯉渕登志子
フォー・レディーは、現場の声に寄り添いながら、人材育成と顧客育成をつなげ、成果へ導く仕組みを一緒に考えます。“人を育てる”視点を大切に、通販化粧品ビジネスの成長を長期的に伴走していきます。
用語解説
- 業務マニュアル-業務の手順やルールをまとめた文書。新人が基本を学ぶだけでなく、既存社員の業務効率化や品質の均一化にも役立つ。通販化粧品企業では「美容マニュアル」「通販マニュアル」など、部門ごとに特化したマニュアルを整備しておくことが望ましい。 ↩︎
- 型(かた)-業務における基本の流れや手順のこと。新人がスムーズに仕事を覚えるための土台となるが、“型”に頼りすぎると創意工夫が失われるため、柔軟な活用が必要。 ↩︎

















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