なぜ通販化粧品は“売るほど離れる”のか? LTVを変える「顧客参加型」戦略

通販化粧品は、売れば売るほど顧客が離れてしまう――そんな課題を感じていないでしょうか。利便性を追求する一方で、買い物の楽しさや関係性が薄れている可能性があります。本コラムでは、その背景をひも解きながら、LTVを変える「顧客参加型」という新しいアプローチを考えます。今回のコラムは、『週刊粧業』2022年12月12日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.80」です。ぜひご覧ください。

※本コラムは2022年当時の状況を前提に執筆しております。現在と異なる情報を含む可能性がありますが、課題の捉え方や発想のヒントとしてご活用いただければ幸いです。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

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通販に欠けがちな「体験価値」とは何か

久しぶりに弊社主催で、通販化粧品事業会社様向けのセミナーを開催した。コロナ禍を踏まえて人数限定で募集したが、幸い満席で実施できた。参加してくださった事業会社の皆様にはこの場を借りてお礼を申し上げたい。

今回のセミナーでは、多くの事例を紹介させていただいた。そのなかでも受講者の方々が熱心にメモを取ってくださり、アンケートでも関心が高かったのは、「お客様参加型」の事例だった。お客様に参加していただく方法や、その結果どういった情報が収集でき、またどういうコンテンツが生まれて、お客様からどんな共感を得たのかという、「手法と結果」を見ていただいたことがよかったのかもしれない。

弊社は通販化粧品の事業会社をサポートする企画会社なので、セミナーもメルマガもすべての情報発信は「通販化粧品事業会社様向け」にしている。そうした日常の業務の中でいつも感じることだが、通販化粧品ビジネスの方々は「お客様に直接対面することがあまり必要ない」と思っているところがある。

私は店頭販売の美容部員のマニュアルを作成していたし、また小売業を営む親戚が多かったこともあって、モノを売るのは「店」という感覚が強く、若い頃は店舗企画の仕事が多かったために、お客様に直接対面する「店舗」の価値がいかに大きいかを知っているつもりだ。

学生時代から親戚の店先に立たされてきたので、店舗でのお客様とのやり取りは多くの価値があると思っている。お客様に商品を触っていただきながら説明できる点や、こちらの薦め方次第で購入してくれたり、感謝されたり。

何より「店舗」はお客様と販売員とが五感で対面し、演劇の様に組み込まれた存在になって、駆け引きもあるやり取りが進行する。言葉にならないイメージも即座に伝えることができて、店舗ほど情報伝達量が多い仕組みはない。

一方、通販は場所や時間を選ばない自由な買い物ができる。簡単に他の商品との比較もでき、品揃えも際限なく見られ、他者の意見まですぐに検索できる。つまり通販は消費者が自分都合で理性的に買い物ができる仕組みである。それでは事業者は買い物の仕組みを整えて、消費者がより便利に買い物ができるようにアプローチしていけばそれで十分かというと、そうではないと思う。

顧客との関係性を取り戻す「お客様参加型」という発想

何より買い物の楽しさやワクワク感がそぎ落とされ、人間と人間のやり取りという偶然の産物も生まれにくくなってしまうのではないか。その楽しみや期待という感情・感覚的な部分を埋めるものが、私は「お客様参加型」ではないかと考えている。

単に買い物をするだけでなく、意見を言ったり、モニターをしたり、モデルになったり、イベントに参加したり、果ては趣味の投稿をしたり。一見化粧品の買い物とは何も関係ないことの様に思えることがとても大切だ。

ダンスが趣味の人は発表会でメイクが必要になるし、家庭菜園をしている人ならUVケアが必要になる。そんな情報は対面販売ではいつもやり取りされている日常の会話なのだ。このような会話のない販売方法は、お客様に寄り添うことはできないのではないか。そうした小売業は物量を多く扱う方法でしか成功はしない。

もっともお客様の暮らしに寄り添うことが小売業の原点ならば、通販ビジネスとはいえ、もっとお客様一人ひとりに近付いていくべきである。

その手始めとして私は「お客様参加型」を推奨している。もちろん何万人、何十万人、何百万人のお客様に対面できる訳ではないので、すべての意見をまとめることはできない。ただし「お客様参加型」の仕組みを整えることで、事業会社が小売業としての「お客様目線」を取り戻すことができれば、大きな前進になると思う。この現場感覚を忘れると小売業は衰退するのではないかと思う。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

フォー・レディーは、「消費者目線」で顧客の本音に向き合いながら、お客様との関係性を育てるコミュニケーション設計を行ってきました。売るための施策ではなく、“選ばれ続ける関係づくり”を実現したい企業様を、伴走型でご支援しています。

深掘りQ&A

なぜ通販では「顧客との関係性」が弱くなりやすいのですか?

接点が“購入時”に偏りやすいからです。
店舗では会話や空間を通じて自然に関係が生まれますが、通販は「検索→比較→購入」で完結しやすく、感情的なつながりが生まれにくい構造になっています。

顧客参加は売上にどのように影響しますか?

直接的な売上よりも“継続理由”を生み出します。
参加を通じてブランドへの共感や愛着が生まれ、「このブランドだから続けたい」という心理が働きます。結果としてLTV向上につながります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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