トライアルは“ブランドとの初対面”-LTVを高める体験設計という視点

通販化粧品において、新規顧客との最初の接点となる「トライアルセット」。しかし実態として、届いても使われないケースが少なくありません。トライアルセットが使われない背景と、使用率を高めてLTVにつなげるための具体的な設計ポイントについて解説します。今回のコラムは、『週刊粧業』2023年1月23日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.81」です。ぜひご覧ください。

※本コラムは2023年当時の状況を前提に執筆しております。現在と異なる情報を含む可能性がありますが、課題の捉え方や発想のヒントとしてご活用いただければ幸いです。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝 化粧品のトライアルセットが放置される理由〟

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トライアルセットが使われない背景と課題

ある通販化粧品会社で、トライアルセットを購入してくださったお客様の追跡調査をしたところ、商品が届いてから7日間経っても使用していないお客様が50%にも達した。

実際にお客様にインタビューをしてみても「いろいろな会社から取り寄せているので、使っていないサンプルが山のようにある」とか「旅行用にとても便利だけど、どこの会社のものかよくわからずに使っている」という声も聞く。しかもそんなお客様ほど「いまだにお気に入りの商品は見つかっていない」そうだ。

試用せずに化粧品を購入することは「肌に合わなかったらどうしよう」というリスクがあるので、化粧品にサンプルは不可欠といえる。企業側にとっては価格以上のコストをかけて作っているだけに、正しく使われなかったり、社名も忘れ去られたりというのはとても残念なことだ。

使われない理由はいろいろある。まずほとんどの企業が1000円程度の同じようなトライアルセットを出しているため、社名も忘れてしまうほど「価値の低いイメージ」のサンプルになっているのではないか。弊社でも様々なトライアルセットを取り寄せているが、中にはとても残念に感じてしまうものもある。

トライアルセットはお客様とブランドの「初対面の場」だ。ビジネスの場ならば、きちんとした服装で自己紹介をするなど、第一印象を良くしようとする。トライアルセットも同様のはずだが、コストを考えると出来る範囲は限られてくる。そのためサンプルの価値が下がり、「有料なのに無料感」の強いお手軽なものになってしまっているのではないか。では使ってもらうには何をすべきか。

使用率を高めるための具体施策と価値向上

1つ目は、梱包・配送への配慮を行うことだ。どこから開けてよいか分からない梱包や、カッターを使わないと開かない構造のものは、開封を後回しにされる。配慮のある梱包はメーカーの好感度も高くなる。またデザインとコピーで、すぐに使ってほしいことが伝わるワクワク感も演出して欲しいものだ。

2つ目は、分かりやすい同梱ツールの制作を心掛けることだ。多くの企業は購入を感謝する挨拶状、ブランドの考え方を記載したブランドブック、ラインナップを紹介する商品カタログ、使用方法の解説書などを同梱している。だが、どこに何が記載されているかが分かりやすく表記されていなければ、しっかりと目を通してもらうことは叶わない。特に商品の解説書は重要であり、お客様には解説書を読んで論理的に納得して、製品の良さに気づいてもらいたいところだ。

3つ目は、トライアルセットを無料にして、お客様には本気でモニターをしてもらうことだ。トライアルセットを注文されたら、「何に悩んで申し込んだのか」を必ず尋ね、電話はもちろん、注文フォームの項目にアンケートとして記入してもらう。そして乾燥に悩む女性からの注文には、「あなたの乾燥の悩みにきっと役立ちます」のように挨拶状も悩みに対応して替えたい。誰にでも同じ同梱物を入れるのではなく、パーソナルな情報を入れると親近感を与えられる。使用感を聞くことを前提にサンプルを提供するのもよい。アンケートやインタビューという目的があれば、届いた日から使ってもらえる。モニター結果は必ず商品開発の参考にさせていただくことを約束できればもっと良い。

最後に、サンプルの価値を向上させることに気を配って欲しい。チープな大量配布の無料サンプルではなく、例えばリボンがついて包装されているだけで価値が上がる。無料であってもひと手間加えることで価値を高められるはずだ。また反対に、本品が高価格帯ならば、サンプルの価格ももっと高くするべきだ。新規顧客を大量に集めたものの、本品には手が伸びずに離脱されてしまうより、数は少なくてもターゲットに合った見込み客に集まってもらうほうが効率がよい。サンプルはブランドのコンセプトに合わせて変化させるべきだ。自社のトライアルセットはお客様目線で見たときに、使いたいと感じられるものかどうか? 一度お客様になった気分で見直してほしい。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

せっかくご縁があったお客様に、商品が使われないままなのは非常にもったいないですよね。フォー・レディーでは、こうした課題を解決するためのトライアルセットの体験設計からコミュニケーションまでを見直し、継続につながる関係づくりをご支援しています。

深掘りQ&A

トライアルセットを有料にするべきか、無料にするべきか?

目的によって使い分けるべきです。
本気度の高い見込み顧客を集めたい場合は有料、使用率やフィードバックを重視する場合は無料+モニター設計が有効です。重要なのは価格ではなく、「使ってもらう仕組み」が設計されているかどうかです。

同梱物は多い方がよいのでしょうか?

多さよりも“整理と導線”が重要です。
情報量が多くても、どこに何が書いてあるか分からなければ読まれません。役割ごとに整理し、「まずこれを読む」といった優先順位を明確にすることが、理解と納得につながります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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