元気に年齢を重ねるシニアが増える今、美容業界にとってシニア市場は大きな可能性を秘めています。シニア人材の経験を顧客理解や商品開発に活かすこと、さらに日本の超高齢社会で培った知見を「J-Beauty」として世界へ発信すること。これからの美容業界とシニア市場の未来を考えます。今回のコラムは、『週刊粧業』2026年9月28日号に掲載された「激変するコスメマーケットvol.122」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした生産・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。
元気なシニアが増える今、美容業界の注目マーケットに

前回のコラムで「まだまだ可能性があるシニアマーケット」というテーマを取り上げたところ、知人や得意先から賛同の声をもらった。そこで今回は第二弾として、「シニアマーケットの未来構想」について考えてみたい。
私の大学の後輩で、つい最近まで母校の理事長を務めていた作家の林真理子さんが先ごろ『80代になるとたいていボケるか死ぬ。70代は神様から与えられた特別な時間』というエッセイを出版された。刺激的なタイトルではあるが、72歳の著者が健康やおしゃれ、仕事、人間関係などを率直に綴り、大きな反響を呼んでいる。年齢の重ね方や心身の変化には個人差があるが、当事者の生活の工夫や気づきには、シニア層の多様なインサイトを考える一冊として興味深い。
彼女のような70代はもちろん、さらに上の80代、90代でも元気に活躍する女性が目立つようになった。私自身も先ごろ受けた健康診断の結果は良好だった。コロナ禍を機に徒歩通勤やスクワット、ストレッチを始めて、定期的に体力測定と栄養指導のアドバイスを受けるようになった成果かもしれない。おかげで筋肉量が増えて姿勢がよくなり、スピーディーに体が動くようになった。おまけに何事にも前向きにチャレンジする気持ちも出てきて、気分的にも若返っている。これは「心身の一致」なのだろうか。
私たちの『美容』は、年齢を問わず、健やかさや自信、社会とのつながりを支える産業でもある。元気なシニアが増えた現在、豊富な経験を持つ美容業界関係者が、定年後も本人の希望や体調に応じて活躍できる「柔軟な働き方」を増やしていくのはどうだろうか。まずはキャリアの豊富な業界関係者自らが手本となり、エイジングケアに取り組むべきではないだろうか。老け込むのをやめ、元気なフィジカルを維持し、若々しいチャレンジ精神を取り戻すことが必要だ。
シニア人材の経験を「顧客理解」とマーケティングに活かす

また元気で仕事を続けられる人が、専門性を活かせる活躍の場も多くしたい。例えば、シニアの気持ちが分かる販売員やアドバイザー&カスタマー担当者、シニア向け商品の企画開発担当者や販売促進プランナーなどなど。こうしたシニア人材の知見に、顧客調査や生活者との共創を重ね、若い世代も交えた多世代チームを組むことで、顧客理解をより深めることができるはずだ。
細分化されたシニア層の分析情報も少なく、リアルなシニアのマーケティングデータが更新されない中で、当事者であるシニア人材は大活躍してくれるに違いない。単なる人手不足を補うだけでなく、まだシニアの感覚を十分に想像できない40~50代のスタッフにとっても、頼もしい存在になるはずだ。シニア層をターゲットにした企業にとっては、彼らの存在は「顧客理解」や「お客様のインサイト分析」の大きな力となるだろう。
本人も企業も「65歳定年退職(再雇用を含む)」という固定観念を捨て、好きなことで存分に力を発揮できる仕組みを作ること。これを実現できるのは、自らの意識を切り替えられるシニアと、柔軟に組織を変化させられる企業だ。成功事例が出てくれば、後から続く企業も増えるはずだ。
こうした輝くシニアや企業が多く出現すれば、税収が増加し、深刻な社会課題も少しは改善に向かうかもしれない。将来が不安視されている年金制度においても、一定の収入があるシニアが増えることは、財政の負担軽減につながるはずだ。またこのような選択肢が広がれば、働く本人も充実し、企業の人材確保、そして知識や経験の継承にも結び付く。
一方で、健康上の理由などで働けない人や、働かない選択をする人の尊厳も、財政の改善で守られるようになるだろう。世代間の対立として捉えるのではなく、誰もが安心して年齢を重ねられる仕組みを考えたい。異論はあるかもしれないが、少なくとも現役・壮年世代に過度な負担がかかり続ける構造は、見直していく必要があるだろう。
超高齢社会の経験を「J-Beauty」の強みに。シニア美容を世界へ

加えて、政府は日本の美容業界全体を巻き込んだ「J₋Beauty」の海外進出を掲げており、世界戦略も視野に入れる必要がある。韓国(K₋Beauty)が持つトレンド対応力や発信力とは一線を画し、日本ならではの高品質、使いやすさ、生活者へのきめ細やかな寄り添い方を強みとした、独自の価値を構築すべきだ。世界有数の超高齢化社会となった経験を活かし、効果実感と品質に優れた「シニアのための美容」で成果を出せば、今後高齢化が進む中国にも、ASEAN各国にも、世界的にも必ずニーズは生まれるはずだ。美容は決して若い人だけのものではない。年齢を重ねる一人ひとりの生活の質や自己表現を支え、自分らしく健やかに生きる力を後押しするビジネスなのだ。
シニア層の価値観や情報との接点は、時代とともに変化しています。
今のシニアに響く訴求や接点づくりを考えるための実践ポイントを資料にまとめました。
ぜひ、販促施策の企画・改善にお役立てください。

鯉渕 登志子
お客様理解を起点に、商品・ブランドの魅力が伝わるコミュニケーションづくりをお手伝いします
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