商品開発は「お客さまとの共創」が鍵|ファンの本音が生む新たな価値

新商品開発において、お客さまの意見を取り入れる動きが広がっています。しかし、ただ要望を聞くだけでは、表面的な声にとどまり、本当に商品づくりに活かせる本音を引き出すことはできません。通販化粧品において重要なのは、日々商品を使っているお客さまの実感や理想を丁寧にすくい上げ、企業とお客さまが一緒に価値をつくる「共創型商品開発」へとつなげること。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』2026年6月4日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.126」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝お客さま共創の商品開発サイクル

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

お客さまの参加意欲は、新商品開発に活かせる大きな資産

通販化粧品会社
担当者様

新商品開発のためお客さまに意見を聞くことになったが……
これまでの新商品開発は、研究部門と開発部門が主体となって進めてきましたが、今回はトップからの指示で「お客さまに意見を求めてはどうか?」ということになりました。どのように進めるべきか悩んでいます。

当社が実施しているお客さま調査の結果から言うと、お客さまは化粧品会社の企業活動に大変興味を持っており、特に好きな化粧品会社の活動には「参加したい」という意思を持っている方が非常に多いようです。

その証拠に、メークやスキンケアのレッスン会はすぐに予約枠が埋まります。工場見学やイベントも同様です。購入するだけではなく、情報提供のための会員登録を募った際にも何万人というお客さまが登録してくれます。これらはすべて「参加したい!」という意思の表れです。また、お客さまは、単に商品を購入することよりも、「体験価値」に重きを置いているという購買行動の変化とも言えます。

このことは、従来の通販的な販促方法に限界が見え始めてきた中で、明るい話題です。

企業側は新規獲得がままならない今、既存顧客との「絆」をより強固にすることで、「顧客の囲い込み」を図っています。そのためお客さまの参加意欲は大歓迎すべき現象です。これを取り込むことが可能か、否か。これからの企業の運命がかかっているといえます。

お客さまの“素人感覚”から、本音と開発のヒントを引き出す

お客さまの意見は、毎日商品を使用している人の意見なので、極めて重要です。ただし私たちが間違ったヒアリングをしてしまうと、目先の意見に惑わされて本音を引き出せないこともあります。

そのためヒアリングする側は、具体的な商品よりも「何がかなえられたらうれしいか」「自分はどうなりたいと思っているのか」など、根本的な「なりたい自分の最終ゴール」を聞く方が役に立つでしょう。

消費者目線が最も重要と考えてきた当社でもお客さま調査で「なるほどそういう意図があるのか」「確かに毎日使うとなればそれも気になるはずだ」など、納得する発言を多く聞いてきました。

毎日使っている当事者だからこそ気になることや気が付いたことは、研究室発想では思いつかないような「目から鱗」の価値があると思います。

お客さまのヒアリングができるようになったら、本格的に「ファンマーケティング」の考え方を取り入れて、企業がお客さまと共に、新しい商品やサービスの開発に取り組んでもよいと思います。いわば「共創型商品開発1」です。

ファンとの関係づくりが、LTV向上とブランドアンバサダー化につながる

それを実現するためには、普段からファンであるお客さまと丁寧に交流し、意見を言い合える関係を作っておかなければなりません。可能であれば「ファンコミュニティー」のような体制を作るべきでしょう。

同時に、企業は自らの考え方や理念を明確にする「ブランドコンセプト」を発信しておかなければ、方向性が定められません。

そんな活動をコツコツと積み上げていくことで初めてお客さまから貴重な本音の意見を伺うことができるのです。

商品開発に意見を出し、モニターとして参加してくれたお客さまは、必ず継続顧客となって、LTVを押し上げてくれることでしょう。中には「ブランドアンバサダー2」となって、他のお客さまにアピールしてくれる人もいるかもしれません。そんなご意見番が出てくれば、企業にとってこんなに心強いことはありません。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

フォー・レディーでは、通販化粧品会社さまに向けて単なる意見収集にとどまらず、日々商品を使うお客さまの実感や理想を丁寧にすくい上げ、ブランドへの共感や継続購入につながる「共創型」の企画づくりをご支援します。

用語解説

  1. 共創型商品開発-企業だけで商品をつくるのではなく、実際に商品を使うお客さまの声や体験を取り入れながら、商品やサービスの価値を一緒につくっていく開発手法のこと。単なるアンケートではなく、顧客の本音や理想の姿を企画に活かすことが重要です。 ↩︎
  2. ブランドアンバサダー-ブランドの魅力を自発的に周囲へ伝えてくれるお客さまのこと。企業にとっては、広告だけでは伝えきれないリアルな使用感や信頼感を広げてくれる存在です。 ↩︎

深堀り!Q&A

お客さまに意見を聞くとき、まず何から始めればよいですか?

まずは「何を知りたいのか」を社内で明確にすることが大切です。
新商品の処方や容器、香り、価格など具体的な要素を聞く前に、「どんな悩みを解決したいのか」「今のスキンケアで満たされていないことは何か」「どんな自分になれたらうれしいのか」といった、背景にある気持ちや理想を探る設計にすると、商品開発に活かしやすい本音が見えてきます。

アンケートだけでは不十分なのでしょうか?

アンケートは多くのお客さまの傾向を把握するには有効ですが、商品開発のヒントとなる深い本音までは見えにくい場合があります。
たとえば「保湿力がほしい」という回答の裏側には、「夕方になると老けて見えるのが嫌」「メイク直しのたびに気分が下がる」など、生活者ならではの具体的な感情が隠れていることがあります。アンケートで大きな傾向をつかみ、座談会やインタビューで理由や背景を深掘りすることで、より実践的な企画につなげやすくなります。

お客さまの声を商品開発に取り入れる際の注意点はありますか?

お客さまの声をそのまますべて商品に反映すればよい、というわけではありません。
大切なのは、個別の要望を集めることではなく、その奥にある共通した不満や期待を読み解くことです。また、企業のブランドコンセプトや開発方針と照らし合わせながら、「自社らしい商品価値」として整理する視点も欠かせません。お客さまの本音と企業の強みが重なったところに、共感される新商品のヒントがあります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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